猫が吠える

我輩は猫である。名前はみずき。

文字と音楽と千葉に関する思い出、いつかという未来

友人のバンドが活動を休止していて、休止前最後のライブにも行ってたしそんなことは知ってたんだけど、久しぶりにサイトを覗いてみたら、もうしばらく更新しないし、解散のような状態なんだって書いてあった。悲しい。とっても悲しい。


この友人っていうのは、ネットで知り合った人で、初めてネットで知り合って実際に会った人。


高校2年生の終わりか3年生のはじまり頃、魔法のiらんどで携帯から一生懸命サイト作って、日記とか文章書いてた。
そしたらある日、日記読んで似た雰囲気を感じたっていってメッセージくれた人がいて、その人のサイト見てみたら、ほんとうに好きな文章を書く人だった。
音楽やってる人で、歌詞書いてて、日記も書いてて、どの文章もすごい好きで、メッセージやり取りしたり、お互いの掲示板にときどき書き込んだり、しばらくしたらメールするようになったり。


高3の夏休みに、夜メールが来て、私の文章を元にして曲作りたいって言ってくれた。
すごい嬉しくて、二つ返事でOKして、そしたら実はもうだいたいできてるんだって言ってそのできかけの歌詞をメールしてくれた。
私が書いたのはほんの短い文章で、自分でもどういう意図で書いたのかもよくわかんない感じだったんだけど、文字にならなかった部分まで汲み取って書いてくれているようで、嬉しかったし、感動したし、この人と知り合えてよかったと思った。読んでたら涙出てきたの覚えてる。


少ししてから彼はバンドを始めた。
それまでソロで歌ってたんだけど、バンドのギターボーカルをやるようになった。
それで日記や歌詞はバンドのサイトで更新するようになって、彼の個人のサイトはほとんど更新されなくなった。



その人は千葉に住んでいて、高校生だった私には、すぐに会いに行ける距離じゃなかった。
ずっと「いつかライブ観に行きます」って言いながら、文字だけのやり取りしてた。


ようやく会ったのは大学2年生の夏。
親には学校に泊まるって言って、千葉まで遊びに行った。
終電近くで彼の家の最寄り駅まで行って、それからバンドのメンバーと一緒に車で九十九里浜に連れて行ってもらった。
浜辺で花火して、ギター弾きながらうたう歌を聴いて、たぶんあの日私は世界でいちばん楽しいことをしてたと思った。
それからみんなでメンバーの一人のおうちにお邪魔して、お酒飲みながらビデオを見て、ずいぶん前に彼に見せるって約束してた私の撮った写真を見せて、寝て、次の日は温泉行って、スタジオにお邪魔して、ライブ見て、打ち上げにまで連れて行ってもらった。
その日は彼のおうちにお邪魔して、手つないで、二人でゆっくり話をしながら寝たんだ。
次の日の朝、帰ってきた。


それから何回か、デートっていう名前のお出掛けをした。
渋谷とか、下北沢とか、手つないで歩いた。たくさん歩いた。幸せな雨宿りをしたりもした。
一度も恋愛感情を持ったことはないし、むこうもそうなんだけど、でも一緒にいてすごく幸せだったし、お互いの文章を読んで嬉しくなったり悲しくなったり涙流したり、そうやってほんとうに満たされた気持ちになれた。



でもしばらくしたらどちらからともなく連絡をとらなくなって、デートもしなくなって、私はサイトを更新しなくなって、彼もバンドのサイトで日記をたまに書くぐらいで、数か月に1回私が日記を書いても、彼は見てるかどうかわかんなかった。
それでも私は彼に向けて書いていたけど。



やり取りがなくなってずいぶん経って、彼のバンドのギターの人からメールが来た。
バンドが活動休止する、その前に最後にライブやるから、よかったら来てって。
すぐに行きますって返事して、千葉まで、ライブ聴きに行った。
高校生の私にとってはまったく想像もできないぐらい遠くて、大学2年生の私にとっては旅行に行くような距離だった千葉に、日帰りで行ってきた。


ライブはとってもよかった。
楽しかった。
やっぱり私の好きな音楽だった。
私の好きなことばだった。
私の好きな声、好きな音だった。
でも、だから、とっても寂しかった。


ライブが終わって、誘ってくれたギターの人にお礼言いに行って、久しぶりって歓迎してくれて、すこし話した。
それから彼に挨拶に行ったら、「お互い、死ぬのだけはやめようねって、顔見て思った」って言われた。
2年近くぶりに会っていきなりなにそれ。意味わかんない。意味わかんないけど泣きそうになったよ。
やっぱり大好きだよ。



それからしばらくサイトはときどき更新されてたんだけど、もう気まぐれにしか更新されないらしい。
べつにメールしようと思えばできるけど、たぶんあんまり返信も来ないし、感覚的な問題だけど、そうやってつながっていたいわけじゃない。


ライブが終わって、メールして、数日経って帰ってきた「またいつか会いましょう」ってメールの、「いつか」を、なんとなく、心のどっかで待っていようと思う。
それは来ないかもしれないけど、それならそれでいいし、もし来るならすごく嬉しい。
たぶんずっと待ってる。