猫が吠える

我輩は猫である。名前はみずき。

ノート

中学3年生ぐらいのときから詩のようなものや文章を書いていたノートと、同じぐらいの時期から毎日書き続けていた日記があります。
私以外のだれも存在を知らなかったノートたち。
実家の部屋でも引き出しの奥に仕舞っていて、一人暮らしするときもまず一番に荷物に詰めて持ってきているもの。


家族にも友達にもだれにも言えない考え事をずっと書き溜めてきました。
大学に入ってからはもうほとんど書かなくなっていたけど、それでもときどき書きたくなっては引っ張りだして書いて、また隠してきた。
今婚約者と一緒に住んでいる家にももちろんあって、どうしようかなと考えていました。


今日婚約者が会社に行っているあいだにすこし読み返していました。
そして、そのノートたちを捨てることに決めました。


そのノートたちは、だれも知らない私の感情や思考を知っていました。
もし私が死んだり罪を犯して捕まったりしたときに私のことを代弁してくれるような存在でした。
そういう存在になるように、書いていました。


だけど今、結婚しようと決めた相手がいて、そんなノートがなくたって私のことを代弁してくれる存在ができたことに気付いて、捨てるときが来たんだなと思いました。
これまではだれにも話せなかったけど、そのころ嬉しかったことも悲しかったことも寂しかったことも苦しかったことも、今の気持や考えも全部話せる相手ができていました。
それはあの頃の私が望んで望んで、でもどうしても手に入らなかったし今後も手に入るなんて思えなかったものでした。


今ならあのノートたちに対してしかすべてをぶつけることができなかった私をなぐさめてやることができると思いました。
だから、あの頃の私を精一杯抱き締めて、ノートを捨てます。
普通ゴミに出して、婚約者との生活で出た生ゴミや段ボールやなんかと一緒に燃やされるようにするのです。


過去の自分を捨ててしまうようでとても苦しいことだけどそうじゃなくて、これから過去に頼らずに生きてくための、前向きな決意なのです。
今まで10年近く私を支えてきてくれたノートたち、ありがとう、さようなら、私はもう大丈夫です。しっかり生きていきます。