猫が吠える

我輩は猫である。名前はみずき。

『君の名は。』

 観てきました。
 去年公開が発表されたときから、産後だし観に行けないだろうなとは思っていたのだけど、やっぱりどうしても観たくて、授乳のあいだの上映に行ってきました。
 行って良かった。家事と育児に追われて乾いていた心が潤う時間でした。ときどきでも良い作品に触れないと人間らしい心が失われていくわ。


 もちろん、ただ「映画が観られて良かった」ではなく、新海さんの作品を、『君の名は。』を、観られて良かったわけで。
 一言で言うと、最高だった。ほんとにとっても良かった。新海誠RADWIMPSを愛する私には、つねに鳥肌が立つような映画でした。
 以下感想を書くけど、ネタバレ気遣わずに書くので読みたくない人は読まないでね。


感想

 なんだか新しい新海さんワールドだったね。
 前半とても商業作品っぽくなっていて、でもべつに嫌なかんじじゃなくああこんな大衆向けのものを作るようになったんだ、と思っていたら、終盤これまで馴れ親しんだ新海誠感が溢れ出してきて、でも最後は明確なハッピーエンドでこれまでの作品とはまた違った印象。新海さんの心境の変化なのか進化なのか、最後にああして二人がしっかり言葉を交わすのは、いままでの新海さんならやらなかったことで意外で、それがとても良かった。あそこで階段ですれ違ったまま終わっていたら秒速と同じだもの。でもそうやって明確にハッピーで終わることを良かったと思える私も成長したのかもしれない。
 ラストシーンは秒速のセルフオマージュなのかな、とか、書こうと思ったけど、新海さん自身が「過去作のモチーフもたっぷりと盛りこまれています」と書いていたのでそういうのはいいか。


 新海さんの作品ってこれまでずっと(『彼女と彼女の猫』は違うかな、『ほしのこえ』からかな)、「運命なり夢なり神様なり、人生のある時期においてそのひとにとって絶対であったものとどうやって折り合いをつけていくのか」ということを描いているように思うのだけど、これまでの作品では切ないような悲しいような辛いような折り合いのつけかたしかできず、その「ある時期」だけが主人公のなかで美化されていって、切ない悲しい辛い気持が主人公のなかにも観た者の中にも残っていた、それが今回はその「ある時期」を通り過ぎて忘れてしまっても「現在」にその気持を更新することができてるので主人公は涙を流し観た者は晴れやかな気持になる。
 私はそういう過去の神様みたいな存在、過去の絶対からなかなか逃れられず秒速の主人公みたいに心の弾力を失っているように思っていたんだ。だけど、結婚して子どもも産まれ、あたらしい生活をして日々気持を更新していくなかでこの作品を観たので、こうしてハッピーに終えるこの作品にこんなに魅了されたのかもしれない。