猫が吠える

我輩は猫である。名前はみずき。

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

 ずっと読みたいと思っていて、文庫化されるのを待っていたと思うのだけど、2015年12月に出ていたらしい文庫本を今になってようやく読んだ。

 彼の巡礼が、後になるほどとにかく苦しかった。

 こういう終わりかたは好きではない。読者に委ねないでぜんぶ書いてほしい。

 私は幸いにもと言うべきか残念ながらと言うべきか、ここまで生き残っている。そうでないことを願っていたしそうでなくなるよう働きかけたことがあったにも関わらず。だからこのまましっかりここに生き残り続けないといけないのかもしれない。クロの、いやエリの、乳房の密な重みを感じながら。