猫が吠える

我輩は猫である。名前はみずき。

アジャイルな家庭を目指して

はじめに

 この記事は子育てエンジニア Advent Calendar 2019の14日目の記事です。
adventar.org  我が家の構成と状況は以下の通り。
 私:31歳女性、モバイル系(ソフトウェア・モバイルコアを作る)ベンチャー企業勤務のソフトウェアエンジニア、フルタイム正社員、フル在宅勤務
 夫:33歳(今年度34歳)男性、私と同じ会社勤務のインフラ~ソフトウェアエンジニア、フルタイム正社員、フル在宅勤務
 娘:2016年2月生れ、3歳(今年度4歳)女性、保育園の年少クラス
息子:2018年9月生れ、1歳男性、今年の4月から娘と同じ保育園に入園、0-1歳クラス

 私と夫は同じ会社に所属し同じ家で在宅勤務しているので、四六時中自宅で一緒にいます。

 以下はこういう我が家の最近の課題と、それをエンジニアリング組織作りの考えかたを取り入れながら解決しようとしている奮闘記です。まだ解決はしていないので、結論はありません。

課題

 娘が大きくなってきて、自己主張や反発も強くなり、それまでみたいにただかわいい生き物を育てるという心構えではうまくいかなくなってきた。
 うちの子育ての方針として、就学前の今いちばん身につけさせたいものは「意欲」であり、そのためには、親があれこれ指示したり禁止したりせず本人が興味を持ったことややりたいことをやらせたい、自由にしていていいんだという安心感を持って行動し、その行動の結果から自分で学んでほしいと思っている。たとえば食事中にコップを倒さないように「危ないよ」って声かけるんじゃなくて、倒して水をこぼしてから自分で片付けをして、倒さないためにはどうすればよかったのかを考えてほしい。そういう経験を繰り返して、自分で問題発見・問題解決ができる人になってほしい、そうやって本人の自主性を尊重する育てかたをしたいと思っている。
 反面、私自身は親からそれとは正反対の育てられかたをしてきた。人に迷惑をかけないことがなにより大事とされ、だから行動する前に指示を受け、困らないように準備することを教えられ、そうやって大人によって生活を管理されてきた。大人にとって都合の良いようにしつけられたので、親の指示や許可を待つ人間に育ってしまった。それが嫌だったけど、でもその「迷惑をかけない」、「失敗しないように準備する」が身に染みついてしまっているから、先に書いたような、自分で考えさせ、失敗を許容するような育てかたをするのがとても難しい。やりたい子育てと自分の身に染み付いたもののギャップに苦しんでいる。
 夫は話を聞く限りどちらかというと自由に育てられたようで、自身の育ちとやろうとしている子育てのギャップはあまり感じていないよう。私が一人でそのギャップにハマってしまって、疲弊したりイライラしたりしている。そしてそのイライラで子どもたち(主に娘)を萎縮させてしまっている。

対策

 そんな折、仕事ではエンジニアリングマネジメント・エンジニアリング組織作りについて考えていて、これは家庭にも通ずるところが大いにあると思ったので家庭作りにも取り入れてみることにした。以下のような観点を意識して家庭という組織を作ろうとしている。

自律可能な組織を目指す

 子どもを含めた家庭のメンバー一人一人が細かい指示を受けなくても自分ですべきことを考えて実行できる、各自が不確実性を減らしていける組織でありたい。
 食事の支度を例にとると、自律可能でない組織の場合、私が一人で献立を考え、食材をそろえ、料理し、夫や子どもたちに「お皿運んで」「ごはんよそって」などと指示を出すことになる。今日の献立が決まっていないところからテーブルに食事が並ぶところまで、ほとんどの不確実性を私一人で減らし、夫や子どもたちに対してはマイクロマネジメントが必要。対して自律可能な組織であれば、例えば私が「今日はカレーにしよう」と言えば、食材の在庫を把握している夫が玉ねぎが足りないことに気付いて買い物に行く。娘は私と一緒に台所に立って切れる野菜を切る。ごはんが炊けたら手の空いている誰かがごはんを混ぜる。カレーの匂いがしてきたら息子は自分でテーブルまで来て、みんなでカレーをよそってテーブルまで運ぶ。そういう組織にしたい。
 そのためには、私一人が握っていることが多かった家事の権限をメンバーに移譲する必要があり、また、メンバーはそれぞれどういう行動を期待されているのかを正しく認識している必要がある。

期待値の擦り合わせ

 期待されている行動を正しく認識するためには、メンバー間で互いに「相手に期待していること」と「自分が相手から期待されていると思っていること」を擦り合わせる必要がある。娘が野菜切りたいって思っているのに親がいつまでも包丁は危ないからやらせたくないと思っていたらうまくいかなくて、子どもが何をしたがっているのかを親が聞くことも大事だろうし、その行動はその年齢の子どもに対して求めて良いものなのかどうかを本や保育園などで学ぶことも大事だろう。そして子どもと対話して、したいこと・してほしいこと・したくないこと・させたくないことについて互いの認識を合わせておくと、自律可能な組織に近付くかもしれない。

オンボーディング

 互いの期待値の擦り合わせができたとして、権限を移譲しようとして、でもやってもらいたいことを子どもはいきなりできるわけではない。一緒に料理するなら包丁の持ちかたや置きかたを、荷物の準備を自分でやらせるなら服の置き場を教えてやらないとできるようにならない。家事のひとつひとつの考えかたやお作法を、これから家事というプロジェクトに入ってくる新メンバーに伝え、また、家庭とか、そもそも人間としての新人である子どもたちには、我が家の、人間界のお作法を子どもたちにわかる言葉で伝えながら、権限を移譲していきたい。プロジェクトの可視化して、情報の非対称性をなくしていきたい。

仮説検証を繰り返す

 息子が1歳になったころ、水の入ったコップににんじんを入れては出し入れては出し、それを真剣な目で観察していた。そうやって物事を試し、よく観察し、観察をもとに仮説を立て、また試し、検証するということを、家庭という組織としても、そこに属するメンバーそれぞれでも、やっていきたい。

変化を受け入れる

 子どもというのはあっという間に成長するものだから、昨日まで考えもしなかったことを今日いきなりやりだしたりする。それを見て親は驚くけど、驚いて禁止したりせず、この子はこんなことができるようになったのだと受け止める。受け止めて、それを元に子どもに対する期待値を再設定する。息子のこともいつまでも赤ちゃん扱いしていてはいけなくて、組織内での役割をすこしずつ担っていってもらわないといけない。そうやって日々互いの期待値をアップデートし、役割を変化させていくと、家庭という組織の構造もアップデートされる。いつでもその変化を受け入れられる用意をしていたい。

おわりに

 こういうことを意識して子どもと接するようにしようと思って、夫と話をし、具体的なタスクに落とし込もうとしている途中。タスク管理ツールはJiraを導入してみた。これまでいろんなタスク管理ツールを試しては続かず放置というのを繰り返してきたが、会社でJiraを導入したので同じように運用できるのではないかと考えて導入、まだ1か月くらいしか経っていないけど、今のところ一応続いてはいる。
 タスクに落とし込む作業は付箋を使ってやっていたけど、GuildHubという仮説検証支援ツールを知ったので使ってみようとしているところ。

 というわけでまだ具体的な行動には移せておらず、もちろん成果も出ていないけど、なんとなく子育てうまくいってないかもしれないというモヤモヤ感を言語化して課題と対策の方向性を定めることができたので、これから行動し、アジャイルな家庭を目指してやっていこうと思います。